MOONDOG & THE LONDON SAXOPHONIC「SAX PAX FOR A SAX」
明るく快活なParisの旋律。New Amsterdamの後ろ髪を引かれる情感豊かな世界は心に突き刺さる。それら唱歌の様なシンプルな曲の根底にあるのは古きジャズに馳せる郷愁であろう。それらはその時代を知らない僕のこころを揺さぶる。何故なのかわからない。まるで夢の世界のようなのだ。そもそも桃源郷は音楽の中にしか存在しないのかも知れない。ムーンドッグの大らかな世界を前にすると己の狭量さが身につまされる。1994年発表
豊永亮(35) 24/Jul/2016
DEREK BAILEY「AIDA」
1980年のパリとロンドンでライヴ録音された本作はタイトル通り間 章に捧げられている。かつてベイリー自身が言った「際限ない新しさの減少することのない可能性」の実践の記録。輪郭が際立つ個々の音の明滅の移り行きに心を委ねていると、不思議な気持ちになる。録音された音はすでに死んでいるが、それでも再生される音が今そこに現れているように感じる。そこにあるのは紛れもなくベイリーの演奏以外のなにものでもない。他の誰でもない音が繰り出されていく。優しさと厳しさが同居した世界。二人とも他界した。
豊永亮(34) 06/Jul/2016
THE MUSIC IMPROVISATION COMPANY「THE MUSIC IMPROVISATION COMPANY」
ジャズから来た人達の集団即興演奏が「結局ソロイストの総トータルでしかない」(ジェミー・ミューア)としても、この音の連なりは彼らの強い衝動を捉えている。いわゆる曲としての片鱗を一切見つけられないこの音の集積は一体何なのか。その総体は演奏者達を超えている。誰もそれが意味するものを明確にできないからだ。うっかりすると見逃してしまう微細な出来事の連続は私たちを音楽の起源に導くかのようだ。さらにその前の、人間、文化に汚される前の「音」そのものに。ジャケットが美しい。(1970年発表)
豊永亮(33) 26/Jun/2016
JEREMY AND THE HARLEQUINS「AMERICAN DREAMER」
このバンド最高!
全員キメキメ革ジャンロケンローラーだけどサウンドは甘く切なくオシャレ。
Vo.はマーク・ボラン、シルヴェイン・シルヴェインの様なヘナヘナ声でバンドサウンドはツボを心得た控えめなロカビリー。
とりあえず曲がよろしい。何回もリピートしてまうわー
(2014年)
12/Jun/2016
ROBERT WYATT「OLD ROTTEN HAT」
1985年発表の本作は、かつてディス・ヒートが使っていたスタジオで録音されたという事実に少し興奮するが、それはさておき、このアルバムの最後の短い曲、P.L.A.(Poor Little Alfie)「哀れな愛しいアルフィー」(岩田祐未子訳)だけでもこれを聞く価値は十分にある。これほど悲しげな歌声は聞いたことがない。これを聞いた5歳の少女が「(アルフィーは)どうして ねむれないの?どうして えを かけないの?」(『ロング・ムーヴメンツ』M・キング著 藤本成昌訳より)と素朴に問いかけた手紙をワイアットに送っている。
豊永亮(32) 04/Jun/2016