THE WORK「SLOW CRIMES」
この中の1曲がフールズ・メイト誌のおまけソノシートに収録されていた。それを聴いた時の凄まじい恐怖は忘れもしない。1981年、16歳だった。元ヘンリー・カウのメンバーを含むインテリ・パンク・バンドは歌という枠組みを保つ一方、アンサンブルにおいては個々の自発的即興性を重んじていた。アクチュアルな表現のために参照されるのはフリー・ミュージックの破壊性、レゲエ、ガムラン、インド音楽に流れる非西洋的な時間と空間。あくまでも参照であり、切実に求められたのはその向こうにある、新たな人間像だった。
豊永亮(27) 08/Mar/2016
GASTR DEL SOL「MIRROR REPAIR」
21分という短さながら密度が濃い内容の本作は、内省的で淡々とした弾き語り、奇妙な音と融合した演奏、幽玄な音響の三つが精妙にコラージュされた美しいアルバム。4曲の間に、ロック調の器楽曲を挟んだ構成。2曲目の、通りの名前を並べただけの素っ気ない歌詞の歌がどうしてこうも情感に満ちているのか。隣室でなされた独白のような歌に続くサティ風のピアノ独奏に、小動物を連想させる電子音とクラリネットによるアンサンブルが重なり、密室からシュールな世界へと移行する。慎ましさと大胆さが同居した世界。1994年作
豊永亮(26) 25/Feb/2016
THE END「0」
遠藤ミチロウの新バンド。
全曲ドアーズのカバーソング。
ミチロウの解釈での日本語訳がバッチリはまっていて痛快なアルバム!
Ba.西村雄介(MOST)Dr.関根真理(渋さ知らず)の強力なリズム隊にナポレオン山岸(ex.ファントムギフト)の極悪非道なファズギターが気持ち良く最高!
オルガン無しでドアーズの曲をここまで聞かせるなんてすごすぎる。ライブ楽しみです
18/Feb/2016
CHARLES HAYWARD「SURVIVE THE GESTURE」
1988年発表の初ソロ・アルバム。ディス・ヒートではヘイワードがどういう人なのかはわからなかった。個人の顔は意図的に隠されていたから。次のキャンバーウェル・ナウになると多少なりとも彼の個性が表れたように思う。そしてここに至って、ヘイワードは己をさらけ出している。聴衆の前で音を出すのはすべてをむき出しにすることと等しいとは言え、己の表現に見合う音の探求の道筋はそれまでのバンド活動とは異なっていたに違いない。このアルバムの重々しさは彼の個人的なところから来ていると思う。
豊永亮(25) 29/Dec/2015
MARS「MARS LP」
マーズはずっと気になるバンドだった。脈打つようなリズム、エイリアンのごとき異様な歌声、ひたすらその弦が金属でできていることを認識させるギターの軋んだ音色。何もかもが当時のロックに異を唱えていた。しかし、フリクションのレックがカヴァーした曲を聴くと、彼らの音楽が突然変異の不気味で意味不明なものではなく、音楽的に構築されていたことを再認識させられる(当然といえば当然だが)。他方で、シアトリカルな表現は文学の影響を感じる。言葉への関心がかなり高かったに違いない。録音 1977~79
豊永亮(24) 24/Dec/2015