JOHN BUTCHER GROUP「SOMETHINGTOBESAID」
英国のインプロ界で活動するサックス奏者の2008年のリーダー作。8人から成る楽器編成はユニーク。サックス、アナログシンセ、ターンテーブル、ハープ、ダブルベース、エレクトロニクス、打楽器、ピアノによる微細な音の響きに重きを置いた演奏が絹を織るように重なって行く。梅雨時の蒸し暑い京都で観たブッチャーは古ぼけた音を出すライヴ・ハウスのクーラーを止めさせていた。弱音を大切にするこの手の演奏家にありがちな無神経で独善的な行いには全く共感できない。ここには緊張感に満ちた演奏が収録されている。
豊永亮(15) 29/Jul/2015
CHRIS SPEDDING「JOYLAND」
クリス・スペディングの2015年新譜。
ロキシーからブライアン・フェリーとアンディ・マッケイ、フリーのアンディ・フレイザー、スミスのジヨニー・マーその他スペディングが関わった様々なミュージシャンがゲスト参加した作品。
スペディングのヨレヨレVo.は相変わらず味わい深くお祭り的なアルバムやけど楽しんで聞いてます。
26/Jul/2015
でんぱ組.inc「でんでんぱっしょん」
何しろ曲のテンポが速いので、歌詞も早口で歌われる。能天気にポジティブな言葉の背後から、パフォーマンスに賭ける彼女たちのひたむきな姿が現れてくるようで感動してしまう。アニメの登場人物のような歌声とプログレハードコアな伴奏の組み合わせが面白い。でんぱ組のバッキングを全盛期(1972年頃)のイエスがやったらどんなだろう。ばかばかしいだろうか。去年(2014年)旧友がでんぱ組.incのことを教えてくれた。おどろいた。未知の世界で活動する彼女たちの存在の不思議さを思った。2013年発表
豊永亮(14) 07/Jul/2015
NICK MASON「NICK MASON’S FICTITIOUS SPORTS」
ピンク・フロイドのドラマー、ニック・メイソンの1981年発表のソロ・アルバム。全曲の作詞作曲はカーラ・ブレイ。彼女にしてみれば、番外編的な音楽だが、シンプルな歌の中にブレイのセンスが凝縮されている。武満徹の手になる歌のように。録音に駆り出されたロバート・ワイアットの悲しみと歓喜が共存する歌声を堪能できることが何より嬉しい。ギタリストのクリス・スペディングがカーラ・ブレイ陣営の中でひときわ異彩を放つ。発表時、FM大阪の番組「ビートオンプラザ」で初めて聴いた。大昔の出来事のようだ。
豊永亮(13) 26/Jun/2015
JOHN GREAVES & PETER BLEGVAD & LISA HERMAN「KEW RHONE」
詩に後からつけられた曲は「ブロードウェイのショー・ミュージック」(ドラマーのA・シリルの言葉)のように展開がめまぐるしく、言葉を無理やりに音符に押し込んだ印象を受けるが、これが面白い。曲想はプログレを想起させる。しかし、各曲の様式に対する破壊的な接近から彼らの真骨頂が聞き取られる。破壊的に見えて実のところクラシックと変わらない保守的な様式美の中で安寧するヘビメタとは違うのだ。情感溢れる乾いたリサの歌声が迷路のような世界で閃く。1977年発表。
豊永亮(12) 18/Jun/2015