THE WORK「LIVE IN JAPAN」
1982年にバンドはドラムスとベースが変わって来日公演を行なった。歌の中に各自が即興的に音を投げ込む方法は継承され、オリジナル・メンバーではないふたりが演奏に緊張感をもたらしているようだ。彼らは自分達をパンク・バンドであると言うが、それはパンクのコンテキストにフリー・ミュージックを劇的に注入した演奏であり、互いの音に細心の注意を払いながら大胆に音を紡いでいる。ここまでエモーショナルに音が炸裂する歌物は中々ない。
豊永亮(85) 18/Dec/2024
FLAMING TUNES「FLAMING TUNES」
ディス・ヒート解散後、ガレス・ウィリアムズとメアリー・カーリーにより1985年にカセットとして発表された。息の長いメロディーが軽快な3拍子に乗って繰り返される『平泳ぎ』、宮廷ガムランの様なポリリズムとインド音楽を思わせるメロディーの重なりが瞑想的な『黄金時代』など、アジア音楽に対する関心がうかがえる。簡素な録音機材によるこもった音質と、決して上手いとは言えないが親しみの持てるガレスの歌はどこかしら郷愁を誘う。
豊永亮(84) 25/Oct/2024
QUIET SUN「MAINSTREAM」
フィル・マンザネラのソロ・アルバム録音時に、かつてのバンドのメンバーがそろったことから制作されたアルバムだが、演奏はパワフルで同窓会的なゆるさは微塵もない。変拍子を多用したいわゆるジャズ・ロック調の曲想は乾いた抒情性をたたえ、各楽器の音が有機的に絡み合う。ヘイワードがヤスリをかけた様な声で歌う『ロンロン』は、後の801ライヴでの同曲のイーノの穏やかな歌声と比べるとヘイワードの張り詰めた特異さが際立って聞こえる。1975年作
豊永亮(83) 18/Sep/2024
CAN「TAGO MAGO」
フィッシュマンズの佐藤伸治の歌はその線の細さがダモ鈴木と似ていると思う。リズミックな唱法のマルコムからダモに変わったことで曲は以前よりもメロディアスになり、どことなく日本のグループ・サウンズのようでもある。マルコム時代よりもリズムが細かくなり、後に顕著になるアフロ・ビートへの接近も垣間見えるが、カンのカンたる反復するドラムスとベースを軸に饒舌なギターとエレクトリック・ピアノ、生々しさを伝える録音と大胆な編集、ノスタルジックな曲想が混合するハイブリッドな音楽が誕生した。1971年発表
豊永亮(82) 23/Feb/2024
HENRY COW「UNREST」
テープ編集、操作等の作業が駆使された本作にはカウのフレキシブルな音楽性が詰め込まれている。アルバム前半にはロックとも現代音楽ともつかない独特の器楽曲を、後半には即興演奏を編集、加工した曲を収録。バラバラと配置された音が不安定にたゆたい、星雲状の音像が消えたのち、ピアノの弾き語りで締め括られる『氾濫』の構成は見事だ。各楽器の演奏が塊にならず拡散、展開するアンサンブルと伸びやかなリズム・セクションが印象に残る。1974年作
豊永亮(81) 23/Jan/2024